17.Hands feel to know(2)

「ダイと…ブランは?」
声を振り絞るようにして尋ねると、アシュアはかぶりを振った。
「分からない。連れて行ったんだと思う。」
アシュアの表情は沈鬱だった。
「おれ…何をどう説明していいか分からねぇんだ。リアとだいぶん話をしたんだけど、あいつ、カインのところには帰れないの一点張りで…。」
リアはコミュニティが移動してしまったことが、今回の情報流出事件の犯人だと『ノマド』自身で言ってしまっているのと同じだと考えたのだろう。
『ノマド』だったからといって、それがイコール、リアではない。
カインはそう思ったが、『ノマド』で生まれ育った彼女にとっては耐え難い苦痛であるに違いない。
「リアはどうしてるの?」
「今、ケイナについてる。」
アシュアは口をへの字にゆがめて答えた。
カインは目を細めた。
「どういうこと…。ケイナは怪我でもしたのか?」
アシュアは首を振った。
「そうじゃない。しばらく興奮状態で手がつけられなかったんだ。今やっと少し落ち着いて…。でもまともにしゃべってくれねぇんだ。」
カインは視線を泳がせた。
「今、どこにいるんだ。」
「エアポートから15分ほど離れた公園かな…。とにかく静かな場所がいいと思って…。」
「戻ってこれるか?」
アシュアの顔を覗きこむようにして言うと、彼は再び顔を巡らせた。
「もうちょっと落ち着かないとだめなんじゃないかな…。」
「いったい何があったんだ…。」
「分からないんだ。何にも話してくれないんだよ。」
カインはしばらく考え込んだ。
「ぼくがそっちに行くよ。」
それしかないだろう。しかしアシュアは表情を険しくした。
「おまえ、出ないほうがいいんじゃないか。」
カインは首を振った。
「クルーレが来てる。誰か護衛を連れて一緒に行くよ。」
アシュアは心配そうな顔をしたが、やがてうなずいた。
「ん、じゃあ、待ってる。」
アシュアが消えたので、カインは立ち上がった。
ヨクは全く起きる様子がない。
起こそうか起こすまいか迷ったが、結局カインはそのままそっと部屋を出た。
クルーレの姿を探すと、彼はフロアの端で兵士の一人に何か指示を出していた。
カインの姿に気づいて厳しい表情のまま顔をこちらに向けた。
「どうかされましたか?」
「ケイナの居場所が分かった。迎えに行きたいんです。」
クルーレはうなずいた。
「わたしが一緒に行きましょう。」
カインは兵士から軍用の大きな銃を受け取って先に立って歩き出すクルーレのあとに続いた。

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